恋は小説よりも奇なり


“自分が気になる作家の本を借りようとしていた子”とか“偶然にも相席となった事が縁で顔見知りになった子”とかもっと他に言い方があるはずだ。

不満だらけの他己紹介。

これだけ不満があっても、やはり初対面の相手には面と向かって言えないのが満の性格だった。

「瀬戸 満です」

満は彼らの前でハッキリ名を名乗る。

「満ちゃんかぁ。こんな可愛い女の子が神の使いなら、おじさんはどんな嫌がらせをされても笑っていられるけどね」

スーツの男は上機嫌に満の肩を抱く。

異性からのスキンシップに免疫が無い満は、背筋をピンと伸ばして身を固めた。

奏は満の腕を引いて友人から引き離し、まるで害虫でも見つけたときのように不快そうな視線を彼に向ける。