恋は小説よりも奇なり



「……そのあたりはできるならもう一度やり直したいです。あーあ……次に結婚するのは私じゃなくて武長先生なんですね」

満は奏の肩にコトン頭を乗せてしみじみ語る。

二人の間に置かれたブーケの花びらをツンツンと優しく突いた。

「そうだな。お前はものすごく他人事のように言ってくれているが、俺は一体誰と結婚するつもりでいればいいんだろうな?」

「え?」

ポカンとした満の呑気(のんき)な顔。

大きなため息が奏の口から零れた。



“恋は小説よりも奇なり”



「我ながら適当なタイトルをつけたと感心する」

奏は一度小説に目を向けて凛と響く涼やかな声で言うと、肩を抱き寄せて彼女の唇に自らのそれを触れさせた。

かたく閉じられた満の唇。

奏の手が白く柔らかい頬に触れて「力を抜け……」と低く囁く。

ふっくらとした唇と薄い唇が再び触れ合う。

優しくてとろけるようなキス。

漂う甘い香りは花からなるものか、それともキスの香りか。

深まる口付けはその場の時間を止めてしまう。



ずっと一緒にいるから――…



聖母マリアに語る誓いの口付け。

満は奏の広い背中にゆっくりと手を回した。