「たまには恋愛小説も悪くない。自分の事だと思えば案外書きやすかった」
奏の何気ない言葉に満はギョッとした。
最初のページに戻り文章に目を通していく。
奏と満が市立図書館で出会った事。
遊園地へ行った事。
空港でのキス。
これまで二人が歩んできた道のりが一冊の小説となって出来上がっていた。
恥ずかしさで顔から火が出そうな満。
しかし、ある事に気付いてその表情は一気に青ざめていった。
「これ……本屋の棚に並んでいたりしませんよね?」
本当なら口にするのも憚(はばか)られる問いかけだった。
返答を聞きたいような聞きたくないような複雑な心境の満。
“お願い!マリア様!”と彼女は何でもいいからとにかく心の中で祈った。



