恋は小説よりも奇なり


「何故お前がここにいる?」

「それは私の台詞です。その言葉そっくりそのままお返しします」

満は負けじと言い返した。

先日は不本意な転落事故のお蔭で何も言えない状況だったが、今回は違う。

「返すな」

「いいえ、返します」

「いらんと言っている」

「私だっていりません」

言葉のキャッチボールというより、相手に攻撃を仕掛けるドッジボールに近い会話が続く。

終わりの見えない無限のループ。

その会話に終止符を打ったのは、スーツ姿の男性がパンパンと手を叩く音だった。

「ハイハイ、二人とも俺のことを忘れてない?」

パリッと着こなしたスーツ姿のイメージとは正反対の明るく柔和な話し方をする男性。

高身長で背広が良く似合う体躯(たいく)をしていて、とっつきやすい雰囲気。

老若男女問わず人に好かれるタイプだ。