恋は小説よりも奇なり



奏の力強い抱擁を思い出して心臓がドキドキと主張した。

あんな真正面から抱きしめられてどんな顔をして向き合えばいいか分からずに俯き加減になる。

「大和の早とちりか……まったく。大体、その大荷物は何だ?見送りだけならそんなものは必要ないだろう。
それとも、留学どころか世界一周無期限の旅にでも出るつもりだったのか?」

奏は満が持つ巨大なスーツケースをパシパシ叩いた。

容赦ない苦情が満に浴びせられる。

言葉を投げられるたびに心はシュルシュルと萎縮していく。

「これは大学帰りにそのまま友人宅へ行くつもりだったんです。大学四年を乗り切ろう合宿なるものを泊りがけでやろうと。そこへ見送りという予期せぬイベントが発生してですね……」

「紛らわしい」

満の長い説明も奏にかかれば一刀両断。