恋は小説よりも奇なり



力いっぱい抱きしめていた彼の腕が徐々に緩んでいく。

「すまない……」

一言謝罪があって奏は満を解放した。

満は落ち着きを取り戻した奏と一緒に最上階のデッキへ場所を移す。

留学に行くと大和から連絡を受けたと知り、満はあまりの驚きで空いた口が塞がらなかった。

それは誤解で、空港に居たのは絢子の見送りの為であったと彼女は慌てて説明した。

「……どうしてそんな肝心なことをもっと早く言わない」

奏はつくづく呆れ果てた様子でものを言う。

一生分を一気に吐き捨ててしまったような溜息と共に。

「だって、高津さんとの間でそんなやり取りがあっただなんて知らなかったですし……。そもそも言わせてもらえる状況じゃ……」

満の声がどんどん小さくなっていく。