「珠ちゃん、高津だけど……、奏は?」
『先生なら先ほどものすごい勢いで出ていきましたが……。何かあったんですか?』
珠子の問いに大和は少し躊躇した。
彼女に事情を説明しても良いか考える間が空く。
「……満ちゃんの事でちょっとね」
その一言で珠子は『なるほど』と納得した。
奏がマンションを飛び出ていった理由として十分な内容。
『あの、私はこれからどうしたらいいんでしょうね……』
作家の自宅に置き去りにされた珠子が途方に暮れた声を出す。
彼女の心中を察すると大和は苦笑いを浮かべた。
「多分、当分帰らないと思うから社に戻って構わないよ。珠ちゃんには苦労かけるね。また夜にでも連絡してやって」
『分かりました。お疲れ様です』
珠子との会話が終わると大和は携帯の通話終了ボタンを押す。



