辺りをグルグル見渡して誰かを探している。
「……いない。何やってんだ、アイツ」
酷く切羽詰った顔をした大和が懐から携帯電話を取り出す。
樹は大和の突然の行動に口を挟むこともできず、ただ呆然(ぼうぜん)とその光景を見ているだけだった。
大和が携帯電話を耳に当ててしばらく――…
「おい、奏!お前なんで空港じゃなくて家にいるんだよ!?」
大和の荒っぽい口調が響く。
『何でって……。早見と打ち合わせ中だからマンションにいるのは当然だろう』
感情的な大和とは裏腹にいつも通り冷静な奏。
奏は元々何事にも淡白なタイプだと大和も承知していたが、この態度ばかりは素直に頭にきていた。
「仕事を放棄しろとは言わない。でも、満ちゃんの門出ぐらい見送ってやってもいいんじゃないのか?
そりゃ、あの子は妙に自信が無くて遠慮深いから“先生に見送ってもらうなんて恐れ多い”とか言いそうだけど、それでも行ってやるのが優しさってものだろう」
畳みかけるような大和の言葉。



