恋は小説よりも奇なり


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満がいる場所とは少し離れたところで、大きなカバンを下げた大和が樹に見送られていた。

「この辺りでいいよ。見送りしてくれてありがとう、樹ちゃん」

「連絡下さい。待ってますから」

「ちょっと長めの出張になるけど、帰ってきたらまたご飯でも行こうね」

大和はその大きな手で樹のふわふわとした頭を猫可愛がりする。

樹は心地良さそうに目を細めた。

樹の頭から手を離して「じゃ、行くよ」とロビーを後にしようとした大和が見知った人影に気付く。

「あれ、満ちゃんじゃないかな」

大和が見つめる方向に樹も視線をやった。

同じフロア内にいるのは確かに親友の姿。

「大きな荷物持って、旅行にでも行くのかな……」

顔を見合わせ、首を傾げる大和と樹。

しかし、大和の顔つきだけが次第に変わっていく。