恋は小説よりも奇なり


「お人好し。武長さんと話す機会をあげるって言ってるのよ。好きなんしょう?武長さんのこと」

絢子の言葉に満の顔は耳まで真っ赤になる。

確かになった気持ち。

今の満に迷いは無かった。

「はい、好きです」

「そう。はっきりした子って嫌いじゃないわ。これ、帰りのタクシー代。……またね」

絢子は満に現金を渡して去っていく。

返す暇など与えなかった。

優雅でスマートなカッコいい女性。

初めて彼女に認められた気がした。

満は大きなスーツケースを横に深々頭を下げる。

コツコツとリズミカルなヒールの音が止まった。

「あっ、言い忘れたけど……別に諦めたわけじゃないから。ウダウダしてたらどうなったって知らないわよ。遠慮なんてしてやらないからね」

顔を上げるとピカピカに輝く絢子の全身が視界に入った。


本気だ……


ウダウダなんてしていられない。


満は心の底から危機感を覚える。

ほろ苦い笑みを浮かべて絢子が見えなくなるまで見送った。