恋は小説よりも奇なり


奏が絢子の事を話す時、あんなにも誠実に答える理由が満にも少し分かった。

絢子が奏に対してどこまでも誠実だったから。

きっとこれからも誠実に接していくのだろうと満は彼女の表情を見て感じた。


空港は新しい何かを求める人々で賑わっている。

視界に入る一人一人が背中に翼を持っているように見えた。

「手続きも済んだし、そろそろ行くわ」

手続きを済ませた絢子が満のもとへ戻って旅立ちを告げる。

「あの……差し出がましいとは思うのですが、この事、武長先生はご存知なんですか?」

満は遠慮気味に尋ねた。

「振られた男に見送りに来いなんて言える訳ないでしょう」

「で、でも……」

「いいのよ。気になるならあなたから武長さんに伝えてちょうだい。竹井 絢子は武長 奏に振られて、女を磨く為にロンドンへ戻りましたって」

「本当にそれでいいんですか……?」

不安そうに満はもう一度問いかける。

絢子が何も言わずに日本を発った事を知れば、彼はどんな顔をするだろう。

淋しがるし、驚くし、色々心配するかもしれない。

眉を下げる満を見て、絢子はその優雅な風貌に笑みを乗せた。