断るにも当たり障りのない理由を考えるのに必死で頭を働かせるが、戸惑いの方が先に出てしまいうまく考え付かない。
「はっきりしない子は嫌いだわ。私、時間が無いの。運転手さんも待たせているからとにかく乗って」
「は、はい」
絢子に言われるままにタクシーに乗り込んだ満。
前にも似たようなことがあったと脳裏をよぎる。
「あの……今日はどのようなことで?」
静まり返ったタクシーの中で満は絢子に尋ねる。
以前“近寄るな”と言われたが、奏とは偶然市立図書館で会ってしまった。
そのことが彼女の耳に入ったのか。
そう思うと心は気が気でない。
「私、ロンドンへ戻ることになったの。またしばらく日本に帰って来られないと思うから、その前にあなたともう一度話ができたらと思って」
サラッと目的を告げる絢子。



