恋は小説よりも奇なり


悶々としていた気持ちを少し落ち着かせて満は席を立つ。

いつまでも時間を取らせては迷惑だから。

「高津さんにお話を聞いてもらえてよかったです。それじゃ、また」

丁寧にお辞儀をして別れの挨拶をする満に「あっ、そういえば……」と大和が声で引き止める。

「きっとすぐに本人からも聞くと思うけど、珠ちゃん結婚するんだって」

「えっ!?」

満は驚きのあまり大きな瞳をクリクリと丸くさせた。

「満ちゃんのこと結婚式に招待したいみたいだったから、そういう声がかかるかもっていうのは頭の片隅にでも置いてあげて。じゃあ、健闘を祈る!」

大和の温かな笑顔。

優しく手を振る様。

大好きな人の幸せ。

今このときだけは嬉しくなって満は満面の笑みを去り際に残していった。


幸せいっぱいの珠子から電話を受けたのはそれから数日後。

結婚の事を実は少し前から知っていたと告げると珠子はつまらない……と落胆した。

突然の報告で驚かせようとしていたようだ。

電話越しでも分かる幸せな表情。

しっかり者の編集者がその時はひとりの恋する女性だった。

とても可愛くて満は以前よりもっと珠子に憧れを抱いた。