恋は小説よりも奇なり


やはりただのお坊ちゃまではなかった。


大和の笑顔。

変わらないその笑みに一瞬だけ黒い羽が見えたようだった。

「……高津さんはすごいです。何でも自分で切り開いて……」

「人に切り開いてもらった人生は楽だけどつまらない。満ちゃんだってその力は持ってるはずだよ。夢や志の先になりたい自分がいる。うちの採用試験受けるんでしょ?」

「…………」

満は下を向いて口をつぐむ。

進路に迷いが出ている彼女には即答することが出来なかった。

「出版社はうちだけじゃないから言い辛いか……」

大和は満の頭をポンポンと撫でながら「ごめんごめん」と軽く謝罪する。

「……私、留学をするかもしれないんです」

満の言葉を聞いて頭を撫でる手を止めた大和。

彼女が今日この場所へ来た理由が大和はようやく理解できた気がした。