恋は小説よりも奇なり


自分から話を止めないかと言っておきながら、最終的には樹に全てを明かすことになるのが大体のパターン。

しかし、満が樹に言っていなかったことが一つだけあった。

それは、彼の小さな笑みにドキッとしてしまった事。

樹に言いたくないわけではない。

ただ、あの小さな笑顔を……もう少しだけ自分の胸の内だけに留めておきたかった。

「ねぇ、ちょっと本屋さんに寄っていかない?」

もうすぐ駅に到着するというところで、樹が駅前の大きなブックストアを指差して提案する。

その店は本やCD、DVDなどの種類も豊富で利用者が多い。

満も新書を求めてよく訪れる書店だ。

「いいけど……、バイトの時間は平気?」

満は腕時計に目をやりながら親友のバイト時間を気にした。

時計の針はもうすぐ六時をさそうとしている。