恋は小説よりも奇なり


「誰かと待ち合わせ?うちの社員なら中で待ってたらいいのに」

「いいえ、いいんです。待ち合わせとかそういうんじゃなくて……。ただ、何となく来ちゃったっていうか――…」

大和の問いにうまい言葉が見つからなかった。

理由なくフラフラと彷徨(さまよ)うようにやってきて、説明も何もできるはずがない。

せっかく上げた顔もだんだんとうつむき加減になっていく。

そんな満の表情を大和は見過ごさなかった。

「俺、今から休憩なんだ。暇なら話し相手になってくれない?ムサイ野郎ばかりに囲まれて仕事を頑張る哀れなおじ様に一時の安らぎをくれてやって。ね?」

大和の人懐っこい笑みが沈んだ満の心を浮上させる。

満がコクリと頷くと彼は社内へと優しく案内した。