恋は小説よりも奇なり


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留学話が持ち上がり、満の頭の中は恋愛と将来と留学でひしめき合っていた。

これ以上はパンクする。

夕飯の献立ひとつ考えられない日が続く。

久しぶりに両親の声を聞いた。

留学の事を相談すると“満の好きな道を進んだらいい”という返事。

実家を離れて進学する時と全く同じ台詞。

そう言って、小さい頃から何でも自分で決めさせてくれた。


始める時もやめる時も変わらずに――…


お蔭で何をやっても後悔することはなかった。

今回も自分の思うように結論を出せばいい。

誰も咎(とが)めはしない。

自由ということがこんなに苦しいことだと今まで知らなかった。

パンク寸前の重たい頭を抱えて、満はいつの間にか高津書房の前まで来ていた。