恋は小説よりも奇なり


「ちょっと色々ありまして……」

恋愛ごとで悩んでいるなど死んでも言えない。

満はボソボソとものを言いお茶を濁す。

中島教授はそんな満を見ながらバリバリとえびせんべいを口にしていた。

「まぁ、論文のことは大した心配はしておらん。それよりも、瀬戸ちゃんは留学に興味はないかの?」

聞き慣れない言葉にえびせんべいを食べる満の手が止まる。

「留学……ですか」

「イギリスのトーマス・バーグマン教授。名前ぐらいは知っておるじゃろ?」

満はコクリと頷いた。

トーマス・バーグマンと言えば文学研究の権威。

高齢で最近ではあまり公の場に姿を現さなくなったが、文学を学ぶ人間なら一度は名を聞く人物だ。

「バーグマン教授とは古くからの知り合いでな。君の話をしてブログを紹介したら、イギリスの大学でもっと深く勉強してみないかと声をかけてもらっての」

淡々と話す中島教授だが、聞いている満からしてみればそれはとんでもない内容。