恋は小説よりも奇なり


彼の引き出しはまるで四次元ポケット。

必要なものは大概出てくる。

二人分のお茶と茶請けの準備が整い、ようやく落ち着いて会話ができる雰囲気が完成した。

向かい合わせに座る満と中島教授はとりあえず日本茶を一口すする。

「豪語(ごうご)するだけあってうまいわい」

中島教授は感心したように言う。

「はい、美味しいです」

満も合わせて頷く。

「ところで、論文は進んでおるのか?この頃、すっかりご無沙汰じゃが……」

なんの前触れもなく本題に入るのが中島教授の常套手段(じょうとうしゅだん)。

分かっていても彼の醸し出す空気に油断してしまうのが満だった。

七十歳を過ぎても全くボケていない。

見るべきところはきっちり見ていた。

論文の進み具合が滞っているのもお見通し。