恋は小説よりも奇なり


「アタシも会いたくなってきちゃったなぁ、その人に。恋愛経験値ゼロの天然記念物、瀬戸 満の記憶に残った男性なんて世界遺産確定ものだもの」

「樹ったら失礼ね……」

満はちょっと憮然とした。

しかし、そんな満の表情が樹の笑いをさらに誘う。

「でもさ“神様の嫌がらせ”なんて最高!いくらなんでも初対面の女性にそこまで言う!?もう思い出すだけで可笑しすぎて腹筋割れそう」

樹は満のアパートであれだけ笑いコケていたにも関わらず、その爆笑は留まることを知らない風だ。

「笑いごとじゃないってば。あの人のせいで本や荷物は落とすし、図書館の人には睨まれるし、大変だったんだから……」

満の大きな溜息が夏の生暖かい風に乗って消えていく。

「“人のせいにするな”って言われたんでしょ。彼が聞いたらまた叱られるよ」

「分かってるよ……」

満は釈然としない表情で俯き加減になった。