「……誰よりも幸せになってもらいたかったんだって思う。先生が話す雪乃さんは先生と同じぐらいとても優しいから……。
でも……言って欲しかった……よね。一秒でも長く……一緒に居たかった……はずだよ。だって……大好きなんだもん……」

透明な滴がポタポタと本の上に零れる。

小さな子どものようにヒクヒクとしゃくりあげながら満は泣いた。

一度決壊した涙腺は止めようにも止められない。

涙はとめどなく溢れ、邪魔になった眼鏡を外して無造作に鞄へ突っ込んだ。

「どうしてお前が泣く……」

「先生が……泣かない……から」

拭ってもおさまらない涙に満の顔はぐじゃぐじゃだ。

「……一番悲しくて……淋しくて……傷ついて……悔しいの……先生……なのに」

奏は涙を流す満から目が離せなかった。