恋は小説よりも奇なり


満の心臓が壊れそうなぐらいドキドキと脈打つ。

声が出なかった。

何と声をかけていいのかまるで分らなくて、言葉の代わりに握ったその手に力を込めた。

「余命幾許もない身体を引きずってまで指輪を返しにきて、理由も告げずに去っていった。愛想を尽かしていたんだろうな……とっくに。
絢ちゃんにも本当に悲しい思いをさせた。俺さえしっかりしていれば世界で一番大切な姉さんを亡くさないで済んだんだかもしれない。どんなに償っても償いきれない……」

奏の瞳が遠くを見つめる。

愛情と罪の意識。

深い愛情が故に彼女たちに対する罪の意識は重くなるばかり。

満は奏の横顔を見た。

悲哀(ひあい)に満ちた表情。

満が今まで見てきた彼の拒絶や自信の無さの正体を垣間見た気がした。