恋は小説よりも奇なり


はじめは驚いて目を瞬かせいた奏だったが、だんだんと息苦しくなって彼女の手を強引に顔から剥ぎ取った。

彼は抑えつけられていた間の酸素を一気に取り入れようと荒く早い呼吸を繰り返す。

「……お前は俺を殺す気か」

「す、すみません……」

萎れた青菜のように反省する満に奏は小さな息を吐き捨てた。

若さ故か、彼女は時々奏が驚くことをしたり言ったりする。

無駄な早とちりも目立つ。

奏は自身が持っていた小説本を横に置く。

「少し昔話に付き合いなさい」

そう言って、彼は静かに言葉を紡ぎ始めた。