恋は小説よりも奇なり


「でも、今は私が武長さんを幸せにしたい。私なら誰よりもあなたを理解できる。悲しみも不安も淋しさも……全部受け止めてあげられる。
お願い、私を選んで。雪乃姉さんだってきっとそういう人を望んでいるはずよ……」

絢子は奏の胸に飛び込んだ。

コロンのほのかな香りが周囲に広がる。

奏には絢子の気持ちが痛いほど分かっていた。

雪乃を亡くして失意の底にいるのは何も自分だけではないということを。

雪乃のことに関して奏と絢子は合わせ鏡のようだった。

目の前の存在に通じるものがあって、手を伸ばして近寄れば応えてくれる。

それはとても居心地が良いもの。

「絢ちゃん、俺は――…」

奏の腕が絢子の肩に手を伸ばした。

合わせ鏡に映った自分の姿を見るように切なく。