恋は小説よりも奇なり


「随分長く話したな」

通常の何倍もの時間をかけて黙祷(もくとう)をしていた絢子に奏が声をかける。

「一年ぶりだもの」

「そうだな」

奏は静かに頷いた。

墓前でかがんでいた絢子がゆっくり立ち上がる。

「私、日本に戻ったら武長さんに聞いて欲しいことがあったの。でも、その前に雪乃姉さんに話しておきたくて……」

「聞いて欲しいこと?」

「私、武長さんが好きよ。出会った頃からずっとあなたの事だけを見てきたの。雪乃姉さんを愛していたのも分かっているわ。
二人がずっと一緒にいて、武長さんが心から幸せだと感じられるのならそれもいいって思ってた……」

絢子の想いの深さを表すような強い風が彼らの間を吹き抜けて、彼女の長い髪が海風に揺られて踊った。