恋は小説よりも奇なり


雪乃が亡くなってちょうど一年が経った日。

二回目は執筆に行き詰った時。

そして、今日がその三回目――…


「どうして今日は来てくれたの?雪乃姉さんの命日でも、仕事がうまくいかなくなったわけでもないのに……」

「それは絢ちゃんが行くというからで……」

「今日まで何度誘っても一緒に行ってくれなかった」

「そ、そうだったか……」

奏は絢子の言葉から逃げるように再び階段をのぼりだした。

その態度に絢子の表情が曇る。

その表情のまま、彼女は奏の後を追った。

いちばん見晴らしの良い高台までのぼってきた二人は、雪乃の墓前で静かに手を合わせる。

少しの沈黙。

聞こえてくるのは風の音と海鳥のさえずり。

奏はゆっくりと目を開ける。

横を見ると絢子はまだ目を伏せていた。