恋は小説よりも奇なり


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週末、奏と絢子は予定通り雪乃の墓参りに訪れた。

二人は何十段もある石畳(いしだたみ)の階段をゆっくりとした足取りであがっていく。

雪乃が眠る場所は海が見える高台にあった。

絢子の手には色とりどりの花束が抱えられ、奏は水のはった桶と勺(しゃく)を持っている。

「武長さん、見て。海が綺麗……」

奏より少し高い位置にいる絢子が青色に染まる海を指さして言う。

遠くに広がる海と所々に浮かぶ小島。

雪乃はこの景色が大好きだった。

「あまりはしゃぐと転ぶぞ」

奏は一段飛ばしで階段をあがり、あっという間に絢子と並んだ。

「大丈夫よ。もう子どもじゃないんだか――…」

笑っている絢子に悪戯(いたずら)でもするみたいに強い風が彼女の身体を揺らす。