恋は小説よりも奇なり


「武長さんを幸せにするのは私だから。これだけはハッキリ伝えておきたかったの」

絢子は自分の想いを告げると伝票を持って席を後にした。

その場に取り残された満はしばらく呆然としていた。

自分は一体何をしているんだろうかと情けなくなる。

本気で奏を想っている絢子に対して何一つ言い返すことが出来なかった。


十年――…


とても長い時間。

容姿も年齢も彼を知る年数もすべてにおいて勝る絢子。

満の心を言いようのない劣等感が襲う。

彼を幸せにできるのは自分ではないのかもしれない。

そう思うと奏がまた少し遠のいていくような気がした。