恋は小説よりも奇なり


満は午後の講義の合間に珠子から奏の連絡先を聞いた。

お礼とお詫びを言わなければならない。

しかし、数回の休憩時間を経ても聞いた番号に連絡をすることができないでいた。



怖い……



頭の中にあの鶯(うぐいす)のような美声が木霊する。


もし、あの声がスマホの向こう側から聞こえるようなことがあったら……


「あっ、満!門のところであなたの事を探し回ってる女の人がいたよ。知り合いなら早く行った方がいいかも」

不吉な想像も大学の友人の声掛けで払拭される。

誰だろうかという疑問の前に「ありがとう」と友人に礼を述べ、満は早足で大学の門を目指した。

門の前には黒い軽自動車。

学生たちに頻(しき)りに話しかけている女性が満の目に留まる。

鶯のような美声。

目を見張る美貌。

満を探していた女性は竹井 絢子だった。