恋は小説よりも奇なり


樹が何を告げたのか何となく分かった気がした。

小さい頃からなんだかんだ満至上主義の樹。

全ては自分の為だったと思えば樹を責める気にはなれなかった。

「ねぇ、樹。もしかして上着と一緒に小説とか返したりした?」

ブックスタンドに立てかけておいた小説が無くなっていることに気付いた満は、本棚や部屋の中を捜し歩きながら尋ねた。

『小説?渡した覚えはないけど』

「そう……。ならいいの。それじゃ、午後から大学があるからこれで」

満はスマホの通話ボタンを切った。

樹が返したのではなかった。

考えられるのは奏自身が持ち去ったということ。

空になったブックスタンドを見ていると切ない気持ちになる。


小説と一緒に奏との関わりもなくなってしまったような――…