恋は小説よりも奇なり


『そういえば、アタシ……満に謝らなくちゃいけないことがあるんだ』

「え?」

『満が持ってた武長さんの上着、勝手に返しちゃって……。自分の手で返したかったよね。ホントごめん!』

電話越しでも分かるぐらいに樹は反省している様子だった。

満は樹に言われてはじめて紙袋が無いことに気付いた。

椅子の上にあるのはバッグだけ。

「謝らないでよ。むしろ、何度も出向いて先生に迷惑かけずにすんだわけだから……」

小さな笑い声を必死に喉の奥から絞り出した。

『それからね……アタシ、武長さんに余計なこと言っちゃった。昨日の満があまりに見ていられなくて……。それなのに武長さんったら普通に満を訪ねてくるものだからつい……』

「そっか……」

満は静かに頷く。