恋は小説よりも奇なり


遊園地の時も感じた満の癖。

必死に何かを訴える時の手段。

「……分かったから……もう眠りなさい」

奏の手が満の柔らかい猫毛に触れる。

包み込むように優しく撫でると満は安心した表情で再び眠りにつく。

彼女の瞳から流れ落ちた滴(しずく)は枕へと吸い込まれていった。



全てをなかったことにはできない……



満の言葉が奏の胸に酷く響いて、波紋を描きながら広がっていく。

振り返ると小説が並んだ棚が目に留まる。

規則正しく収納されたものとは別に、棚の上には一冊の本がブックスタンドに立てかけられていた。

それが自分の小説だと奏には一目で分かる。

奏は手に取って表紙をめくった。

裏にはサインが書かれてある。

満が珠子の代わりに原稿回収に訪れた日、彼女に手渡した小説。