そのほとんどが武長 奏が書いたものだ。
奏は掛け布団をめくり、満の身体をふわりとベッドへ寝かせた。
火照って赤みを帯びた頬。
無防備で穢(けが)れを知らない顔。
怒らせて、泣かせて、表情を曇らせてばかり。奏は満の笑顔を知らなかった。
満を起こさないように気遣いながらそっと掛け布団をかける。
なるべく足音を立てず部屋を後にしようと踵を返したその時、奏の手を小さくて細い手が引き止めた。
「……私……ダメです……。全てを……なかったことには……できない……。ごめん……なさ……せんせ……」
虚(うつ)ろな瞳が奏を捉える。
涙をいっぱい溜めて。
主旨のつかめない言葉。
酔っ払いの戯言(ざれごと)だと済ませることは容易だった。
しかし、奏はなだめるように指の一本一本を解いた。



