急に意識を失ってしまった満に一瞬血の気が引いた樹と奏だったが、彼女の小さな寝息が聞いて安堵した。
道端で眠り込んでしまった満を奏が背負い、彼女の荷物は樹が持つ。
足並み揃えて満のアパートを目指す二人。
奏は自ら会話をするタイプではなく、樹もしばらく何も話さなかった。
こういう事は満自身が乗り越えていかなければ意味がない。
彼女が求めるならば愚痴の一つや二つ聞く。
しかし、それ以上は他人が介入していい問題ではない。
“人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ”という言葉もあるぐらいだ。
ここから先は邪魔以外のなにものでもないのだと樹も十分理解しているつもりだった。
「どうしてこんなところにいるんですか……?」
抱えきれない想いを慣れない酒の力を借りて忘れようとしている親友が気の毒で、何食わぬ顔で満の前に現れた彼の心中が信じられなくて、樹は探るように奏に疑問を投げかけた。



