恋は小説よりも奇なり


「そうやってみんら騙すの……。思わせぶりな態度とってさ……期待させるだけさせてさ……最後はドーンって突き落とすの……」

いつもの満なら決してこんなことを言わない。

人のことを悪く言って自分自身が傷ついた顔をする。

こんなのは自分じゃない……と無意識に違和感を覚えていた。

「いいことばかりが恋じゃないよ……満」

これから先、恋を続ければモヤモヤして苦しいことが沢山待ち構えている。

樹には彼女の気持ちが痛いほど理解できた。

満は再びヨロヨロと歩き始めたが、もう少しでアパートの敷地内だというところで完全に立ち止まってしまった。

街灯の下に武長 奏がいる。

酒の力で幻覚でも見えているのか。

ゆっくりと瞬きをしてみても、瞳には奏の姿が映っていた。

満の体温がカーッと上がる。

地面が歪んでみえて、地面と平行に倒れこんでしまった。