恋は小説よりも奇なり


「失礼します」

店員が注文した飲み物を運んでくる。

「はい、生」

樹がビールグラスを差し出すが、満はなかなか受け取ろうとしない。

お冷の入ったコップを小さく揺らすだけだ。

「満!今日はアタシのおごりだ。たんと食え!武長 奏がなんぼのもんじゃい!」

樹はもう一度「はい」とビールグラスを満に向けて強く押し出す。

満はようやくお冷の入ったグラスを置いてそれを手にした。

「今日は飲むぞ!体脂肪もダイエットも一切気にせず喋って飲んで食いまくる!満に付き合うからね」

共に飲食をして必要なら愚痴だっていくらでも聞く。

小さい頃からずっとそうしてきた。

辛いことがあってもお互いを支え合いながら乗り越えてきた。

「樹……」

溢れる優しさが満の心に深く染み渡った。

「さぁ、乾~杯!」

樹の合図で互いのグラスを合わせた。

現在の満の心境を表すかのように、グラスの中のビールがゆらゆらと揺れた。