恋は小説よりも奇なり


***

満は走って、走って、とにかく走った。

仕事帰りのOLやサラリーマン、制服を着た高校生の集団を抜けていく。


目的地はどこでもいい。


彼らの声が――…親しそうに会話をするあの二人の声が届かないところならばどこでも良かった。

息が苦しい。

心臓が破裂しそう。

全部走っている所為にしたかった。

止まれない。

止まってしまえば苦しさの本当の原因を否応無しに自覚させられる――…


「満?」

走り続ける満の足を止めさせたのは名前を呼ぶ親友の声。

樹は満の顔を見て驚いた。

「どうしたのよ!? 酷い顔……」

「……」

「アンタ今にも泣きそうな顔してる」

樹に指摘されて、満はこの時初めて自分がどんな表情をしているのかを知った。

ブティックのウィンドウに映った顔は酷いものだ。