病み上がりの身体には酷く堪(こた)えた。
「そうじゃない。俺はただ絢ちゃんが心配で――…」
「分かりました。今度の日曜日にデートの約束をしてくれたら大人しく帰ります」
「……」
奏は何も言わなかった。
日曜日に予定が入っているわけではない。ただ、絢子の気持ちにはなんとなく気付いていて、それに応えられない奏は首を縦に振ることを躊躇っていた。
「……一年ぶりなんだよ。一つぐらいお願い聞いてくれたっていいじゃない……」
部屋にあった荷物を抱えながら絢子は言う。
ご飯を一緒に食べて。
デートをして。買い物に付き合って。
彼女が願うのはいつもこんなこと。
それ以上の事は決して望まない。
「日曜日の朝、迎えに行くから。逃げたりしたら、仮病つかって打ち合わせの日にちをずらしたこと珠子さんにバラしちゃうからね」
絢子は捨て台詞を残して奏の部屋を後にした。
強引なようで押し切らない。
反応を見て、言葉を選んで、慎重に……
「……それは困るな」
昔と変わらない絢子。
奏は少しホッして口元を緩めた。



