恋は小説よりも奇なり


奏は上着を持ったまま虚をつかれて目を見開く。

「いらないったらいらない!私にはそんな風にしてもらう資格ありません」

「……資格ってなんだ、資格って――…」

奏には満がなぜそこまで意固地になるのか理解できなかった。

「先生に優しくされる資格です……」

自分で言って満はなんだか悲しくなった。

優しくしてもらうどころか、こうして横に居てもいい資格さえ今の自分にはないのだ。

「なんだそれは。くだらない」

満の心中などお構いなく奏は鼻で笑った。

そんな資格は目の前のゴミ箱にでも捨ててしまえと言わんばかりに。

「くだらなくなんてない。勝手なことばかりして先生に迷惑かけて……。その上、風邪なんてひかせてしまったら――…」

満の目尻に雨の水滴と混じってうっすらと涙が浮かんだ。