恋は小説よりも奇なり


「先生……“シラベさん”って誰ですか?」

セレブらしい気品ある男女が行き交う中で、満はコソコソ声で奏に尋ねた。

普通に会話していたのでは話し声が丸聞こえだ。

「調 幸咲(しらべ こうさく)。ここに飾られている全ての絵を手がけた画家のことだ」

奏は壁に飾られた一枚の絵画を指さした。

そこには世にも美しい女性の絵が描かれている。

「すごい……綺麗……」


まるで天使みたい。


繊細なのに弱々しく見えない力強い絵。


柔らかさや繊細さは色鉛筆で表現されていた。

ただの塗り絵とはわけが違う。

何層にも重ねられて出来上がった色のコントラスト。

専門家でも画家でもない彼女にもその素晴らしさが分かるほどの絵だ。

満はその絵に魅せられた。