恋は小説よりも奇なり


遅い昼食後、すぐに遊園地を出た奏と満は休暇中の人でにぎわう街を歩く。

正確には奏の後ろを金魚のフンよろしくと満がついて行っているのだった。

奏はとある白壁のビルの手前で歩みを止めた。

「いつまでついて来るつもりだ」

「あの……えっと――…なんとなく……」

この期に及んで“帰るタイミングが分からなかった”などと口が裂けても言えない。

代わりとなる理由も考え付かない満は灰色のアスファルトを見つめて奏から次の言葉が出るのを待っている他無かった。

「寄るところができた。お前も付き合え」

それだけ告げると奏はビルの中へ消えていく。

満は彼が言うがままついて行くだけだった。

「武長様、ご無沙汰しております」

扉の向こうでは中年で紳士風の男性が立っている。

誰かが来館するのをそこでずっと待っていたようだ。