恋は小説よりも奇なり


空になった紙コップがグシャっと無惨な音を立てて潰れるのが耳に届く。

また余計なことをしてしまったと悔やんでももう遅い。

「……帰る」

奏は立ち上がり、ゴミを近くのくず籠へ放り投げた。

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

満は奏の着衣を両手で力いっぱい掴んで引き止める。

「願いを……叶えてあげたかったの。“遊園地ってデートみたい”って話す樹がすごく嬉しそうで。大事な友達だから力になりたくて。それで私――…」

着衣を掴む手に力がこもる。

口を開けば開くほど出てくる自分勝手な言い分。

きっとそういうところが癇(かん)に障って手切れ本まで渡されたのに、気付けば同じことの繰り返し。

「お前の友人が誰に好意を寄せていて、それについてお前が何をしようと俺には関係ない。
ついでに、今この場に大和が居ようと居まいと自分の仕事を終えてここには用が無いから帰ると言っている。分かったらその手を放しなさい」

奏は拘束する満の手にそっと自らの手を重ねる。

グッと力が込められていた満の拳が蝶々結び解くように徐々に離れた。