「まぁ、見てなって」
大和が得意気にそう言ってからすぐのことだ。
奏の手がアトラクションの椅子を這いはじめる。
彼の視線は変わらずトロッコの外に向けられたまま。
「……はい、ノート」
奏が視線を動かした絶妙なタイミングで、大和は上着のポケットから小さなメモとボールペンを取って彼に差し出す。
それを無言のまま受け取る奏に、と満はまるで珍獣でも見るみたいに目を丸くして見守るだけだった。
遊園地の乗り物をあんなにも楽しくなさそうに乗る人がこの世に存在していようとは……
満はかなり驚いた。
楽しくないにしても怖いとかドキドキとか何かしら感情があるものだが、ノートとボールペンを手にした奏は完全なる無感情だった。
心ここにあらずもいいところ。



