恋は小説よりも奇なり

編集者としてなら大正解。

武長 奏は小説家以上でも以下でもないのだから。



しかし、一人の人としてみるならそれは正解なのだろうか……



彼と出会いを果たした人間として間違った見方をしているような気がする。

満は萎れた野菜のごとく肩を落とした。

「別にお前を責めているわけじゃない。感情には人の数だけ事情と違いがある。
お前が俺自身ではなく文章が好きだというのも悪くない。自分で言っておいてなんだが、あまり考え込むな」

奏は冷静だった。

才能だけに目を向けられることなどどうとでもないというように。

本来の自分など誰にも見ていないのが当然だというように。


『武長奏って――…人間という生き物に対してどこか冷めたようなところがあってね』


以前、珠子がファミレスで告げた言葉の意味が満にも少しだけ理解できた。