恋は小説よりも奇なり


「詩人っぽい言い回しをしたが、実際は物体にそんな感情はない。まぁ、気まぐれだな」

「き、気まぐれ……」

満の気持ちはさらに複雑なものになった。

ただの同情でないことに喜びを感じ、吹けば消えてしまいそうに不確かな彼の気まぐれに寂しさも覚える。

そんな心中を知ってか知らずか、奏は「そうだ」と一度頷いた。

奏が執筆を行っている間、満は彼に言われた通りに本を読んで時間を埋めた。

武長 奏の小説にすっかり心を持っていかれ、時計の短針が少し傾くぐらいの時間が経過していることに気づかない。

「これだけそろっていながら手にするのが俺の本とは……」

奏の手が満の華奢な両肩に乗せられ、背後からあまり血行のよくない顔がひょっこり覗く。