恋は小説よりも奇なり


「先日……」

奏は話し始めると同時に、原稿用紙の上を走らせていた手を休めた。

「とある公園で万年筆を拾った。濃紺で金の装飾のものだ」

満の瞳が大きく見開く。

彼女が当時のことを思い出したかどうか確かめるように、奏はその様子を見ていた。

一拍置いて続けた。

「偶然にもその日は俺の誕生日だった。凝ったラッピングが施されたそれは、まるで祝う相手を探しているかのように置かれていた。たった一つ、孤独に……」

「だから……拾ってくれたんですか……?」

満は少し申し訳なさそうに問う。

公園のベンチに乱暴に置き去りにされたプレゼントをきっと奏は哀れだと思ったのだ。

ファミレスで珠子と会った時、奏が荒れていたと聞いた。

欲しくもないものを半ば強引に受け取らされて迷惑だったのだと思うとなんとも言えない気持ちになる。