恋は小説よりも奇なり


「い、いいんですか……?」

「お前は空気みたいなものだ。同じ空間に存在しようが然(さ)して気にはならん」

茶をすする奏の表情は丁度いい茶の温度に満足している。

「どうせ存在感無いですよ。空気は空気らしくおとなしくしておきますからご心配なく!」

「あぁ、そうしてくれ」

拗ねて口を尖らせる満のことなど気にもとめない。


失礼しちゃう……


満は憮然とした表情で本棚の前に仁王立ちをする。

床から天井まで広範囲に亘(わた)って広がる本棚。

リビングにあったものとは違う立派な家具だ。

その中にはビッシリと小説が並んでいた。

満もよく知っている有名作家から、未だ聞いたことさえない作家まで幅広い。

満は代わる代わるそれらの本を手にした。