最初は誰かの会話だろうと思っていたけど
ふと気配を感じて目を開けると


さっきよりも近い場所から
私に話しかける人がいた。



突然の男性の顔と
急に話しかけられたことから
思わず椅子から転げ落ちてしまった。






「えぇー!大丈夫ですか!?」





駆け寄る彼は
笑うのを必死に我慢しているような表情で。


さっと私に手を差し出した。


その手を握ることなく立ち上がった私は
未だ心臓がドクドクしている。






「あーははっすいません。
びっくりさせてしまって!」





握られることの無かった
彼の差し出した手は、
しばらく宙を泳いだ後にさっと引っ込められた。