いつものスポットへ急ぐ。
って言っても静哉がいつも行くところ。


別に魚を大量に釣りたいわけでもないから
場所は正直どこでも良かった。


少し歩くと見えてきたスポット。
そこには珍しく先客がいて、
少し離れたところに荷物を下ろした。




何度か弟と来ていたおかげか、
準備もスムーズに出来た。


女子らしい要素が少ない私は
餌のちっちゃな虫も躊躇なく触れる。


ふと視線を感じて顔を上げると
少し離れたところに座る先客の方と目が合った。



その頭にはキャップが被られていて、
慌てたように前に向き直る。


なんだろうと気にする間も無く
低い椅子に座り
糸を垂らした私はフーッと息を吐き、
静かに目を閉じた。



疲れが全部取れるかの感覚に
気持ち良さを覚える。


1人で来るのもいいなぁなんて
黄昏ているときに






「よぉここ来はるんですか?」





なんて声が聞こてきた。