彼はまっすぐに前を見つめる。


前髪は少し伸び、目にかかって
表情を見ることができない。


走ってきた足は自然と止まり
そこから一歩も動けない。



どうしよう。


会いたくて仕方なくて
夜中に飛び出してきたのに


いざとなると体が動かなくなってしまったんだ。


時間経過は分からない。


何も出来ず立ちすくんだまま
彼の背中を眺め続けた。


このまま彼が気付くまで待ってようか。


それだと来た意味はなんだったんだ。


来た意味を見出すため。
彼に会いに来たと伝えるため。


止まったままの足を一歩踏み出した。


その時
タイミング悪く彼が立ち上がったために
足を再び止めてしまった。